今回は飛翔篇です。前回までが「1:黎明篇」、「2:野望篇」、「3:雌伏篇」、「4:策謀篇」、「5:風雲篇」でした。内容を忘れてしまうのであらすじを書き留めます。申し訳ないっす、ネタバレしています。
とにかく人類発祥の地である「地球」が、観光地にもなっておらず一般市民は名前も知らないような存在になっているというのがアレですね。地球から出たのがもうそれだけ遠い昔というか。
以下のあらすじを読んで頂ければわかりますが、一時期の地球が植民星を顧みず自己の欲望を爆発させたことで憎悪の対象となり、頭の隅にも置きたくないような存在になっていたのでしょうか。
以下、あらすじです。
まず地球衰亡の歴史がありました。
二つの大勢力が争って熱核兵器により両国が滅亡。辛うじて弱小国家の10億人程が生き残り、大国の暴挙を防ぐためブリスベンを首都とする統一政府が誕生。宗教の支配力が一時しく低下し内戦が起こらず再建が急速に進む。そして宇宙に乗り出すまでになった。
やがて恒星間航行時代になり、広域すぎて単一の権力体制に亀裂が生じる。宇宙省の一部が宇宙軍となり肥大化。地球が既得権として吸い上げていた他の植民星の住人の不満は蓄積。不満を逸らすための仮想的と戦って勝利するが、軍部がそれに味をしめて蛮行を行うようになる。
その蛮行によって地球軍に復讐を誓う者たちが現れ、それにより地球政府は倒される。というのが地球の歴史。その後、権力争いの果てに銀河連邦が成立する。長い時間が経っており地球は忘れられた存在に。という流れがあった。
その銀河連邦を倒してできたのが、前のゴールデンバウム王朝(銀河帝国)。本篇の第四章で帝国の各皇帝についても語られてます。
「ゴールデンバウム」という文字をみる度に、うまそうな高級バームクーヘンを思い浮かべるのは私だけではないと思いますが。
物語が進むと、ラインハルトが即位してすぐキュンメル事件が発生。キュンメル家の当主がラインハルトを暗殺しようとするが失敗に終わる。地球教が裏で糸をひいているとわかる。
ヤンは退役して結婚し年金生活となったが、その生活は帝国軍だけでなく同盟側からも監視されていた。
ユリアンは地球へ向かうために出発。途中でポリスーン星域に潜んでいたメルカッツらと再開する。そこで若き女性パイロットのカーテローゼと出会う。(後にヤン艦隊のお仲間シェーンコップの娘と判明)
ユリアンは地球に到着。その日は、帝国の会議において地球への武力制裁が決定した日だった。
同盟の首都ハイネセンでは、駐在する帝国の高等弁務官レンネンカンプがヤンを処罰したがっていた。
帝国のNo.2である軍務尚書オーベルシュタインは、「ヤンの身柄を引き渡すよう同盟に要求せよ。そうすれば隠れているメルカッツが助けに現れる」とレンネンカンプに進言する。
ヤンは自身が守った同盟によって逮捕、拘留されてしまう。妻のフレデリカやシェーンコップ、アッテンボロー、薔薇の騎士連隊がヤン救出のために立ち上がる。
ヤンは処刑される寸前だった。シェーンコップらはヤンを救出。彼らに促されたヤンは、同盟を出て帝国とも同盟とも異なる場所で自らが長となる決心をする。策として同盟議長レベロと取引し、レンネンカンプを人質にハイネセンを離れることに。
そのため帝国本部を急襲しレンネンカンプを人質とするが、彼は名誉のため自死を選ぶ。同盟は帝国の追求を恐れレンネンカンプの死を隠す。
地球に到着したユリアンらは信徒のふりをしてヒマラヤ地下にある地球教本部にもぐり込む。その頃、帝国のワーレン大将が地球教団の上層部を討とうとしていた。
ユリアンらは教団本部でとり続けていた食べ物に合成麻薬が入っていることに気づく。禁断症状を見つかり医務室で仲間と出会ったユリアン一行は教団信徒と応戦する。そこに帝国軍兵士の姿が見えた。
帝国軍は地球教本部を壊滅させた。但し教祖、幹部が本拠を爆破して自らを地球に埋めたので、実際の生死は不明(まだ何かありそう)。その際、ユリアンは地球教の敵同士ということで帝国軍を案内することに。運良く資料室から歴史が刻まれたディスクを入手する。
帝国の会議ではレンネンカンプの軽挙妄動を批判する声がつよく、真相を究明すべしとなった。ラインハルトはレンネンカンプ登用を誤りだと認める。しかし内心では失敗を期待していたのではないかとも思う。無意識で騒乱を求めているのだ。
ラインハルトは大本営をフェザーン(帝国と同盟の中間)に移すことを命令する。ゆくゆくは遷都という彼の意向を皆が知ることになる。
そして、ヤンは反乱者としてハイネセンを離れていた。今後のことを構想していた。のんびりした年金生活は、たった二ヶ月で終わってしまった。
そんな中、イゼルローンに近い恒星系自治体「エル・ファシル」が、同盟から分離独立を宣言する。
基本的に帝国軍はヤンが名将のため敬意を払っています。しかし同盟はヤンがいることでいつ帝国が攻め込んでくる口実になりはしないかと恐れている、という背景があります。
あらすじだけでは意味不明だと思いますが、レンネンカンプの件は仕事でもあることだと思います。誰にも相談、連絡せず自分だけで解決しようとし、結局は手に負えずどうにもならない状態を招いてしまうというやつですね。
彼は元々自分で種を蒔いたわけだし、自分だけの手柄にしようと考えた末のことですが、サラリーマンとしては、何か問題があれば情報を共有し責任を分散させる方が楽じゃないですかね。
飛翔篇ということで何が飛翔なのかなと思いながら読んでいましたが、ユリアンが自分の意志を持って遙か遠くへ行くまでになったこと、ヤンが民主共和制のために重い腰を上げたことが(同盟はもう破綻しているので)、その意図するところなのかなと思いました。
気になる言葉
ヤン
「我々は敵の堕落を歓迎し、それどころか促進すらしなくてはならない。情けない話じゃないか。政治とか軍事とかが悪魔の管轄に属することだとよくわかるよ。」
ヤン
「国家は市民の福祉と民主共和制の理念とを実現する手段の具現化であって、それ自体の存立は何ら目的たり得ない。」
ヤン
「野に火を放つのに、わざわざ雨期を選んでする必要はない。いずれかならず乾期が来るのだから。」
ロイエンタール
「貴族とは制度化された盗賊のことだ。暴力で奪うのは悪だが、権力で奪うのはそうではないとでも思うのか。」
ヤン
「法に従うのは市民として当然のことだ。だが、国家が自らさだめた法に背いて個人の権利を侵そうとしたとき、それに盲従するのは市民としてはむしろ害悪だ。なぜなら民主国家の市民には、国家の犯す罪や誤謬に対して意義を申し立て、批判し、抵抗する権利と義務があるからだよ。」
作者
「戦略とは状況をつくる技術。戦術とは状況を利用する技術。」
シェーンコップ(ヤンを救ったとき)
「どういたしまして。長生きするにしても、おもしろい人生でなくては意味がありませんからな。あなたをお助けするゆえんです。」
シェーンコップ
「けっこうな理論ですな。国家が個人を売るのはよいが、その逆は許されないとおっしゃる。」
ボリス・コーネフ
「教団にとって信徒の命ほど安いものはない。権力者にとっての国民、用兵家にとっての兵士と同じさ。」
ラインハルト
「王座とはつまるところ黄金の檻であるにすぎない。」
次回は「怒濤篇」です。怒濤の展開になるということだろうから期待が高まってしまいますね。
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