今回は「3:雌伏篇」です。前回までに「1:黎明篇」、「2:野望篇」と読み進めていました。内容を忘れてしまうのであらすじを書いておきます。ネタバレしています。
雌伏篇は自由惑星同盟のヤン・ウェイリーが保護者となっている少年、「ユリアン・ミンツ」が軍人の道に進み、その初陣から物語がスタート。(ユリアンは戦争孤児) 彼はイゼルローン回廊付近で不意に出遭った帝国軍との小競り合いから無事に生還する。
イゼルローン回廊:帝国と同盟の間にある重要なトンネル状の空間。他の宙域は航行が不可能で宇宙の通り道となっている場所
一方、帝国側では宰相のラインハルトが内政の整備と権力基盤の充実に力を割いていた。奪取されたイゼルローン要塞を落とすため、帝国側も要塞を相対させる必要性を進言され、これを受ける。
イゼルローン要塞:かつて帝国軍が建設した直径60kmに及ぶ軍事用の人口天体。ヤンの奇策により同盟軍が占拠、同盟軍の前方拠点となっている
また自治領のフェザーンでは、帝国に肩入れして銀河の再統一を図り、しかる後にラインハルトを抹殺し全てを手中に収めようというルビンスキーの策謀が。
フェザーン:経済的に繁栄している特殊な地方行政単位。外交や経済に優れ、帝国や同盟と微妙なバランスを保ち独立を守っている。狡猾なルビンスキーが自治領主
一方、帝国のガイエスブルグ要塞はワープ試験に成功。正式にイゼルローン攻略への登用が決定した。
そんな折、イゼルローン要塞のヤンの元に首都から査問会への出席命令が下る。(ハイネセンの同盟中枢部は腐敗が進んでいる)
召還されたヤンは首都ハイネセンに向かう船上で思う。「ラインハルトの改革は民主的で国民に支持されるものだ。敵とはいえラインハルト新体制との共存は可能だろう。しかし民衆を搾取の対象とみなす旧体制と結託することは、帝国の民衆をも敵にまわすことになるだろう。」
ヤン不在のイゼルローンでは、帝国軍のガイエスブルグ要塞がワープして来たことを検知する。ヤンは査問会から解放されイゼルローンに戻るが、不在中に要塞対要塞の戦いが始まりやがて膠着状態に。
ラインハルトはキルヒアイスと共に目的を見失った感がある。その帝国からはミッターマイヤー、ロイエンタールという援軍が出発。戻って来たヤンはイゼルローン回廊でケンプ(帝国要塞の長)との艦隊戦に入る。
追い込まれたケンプは、自要塞をイゼルローン要塞にぶつける作戦に。ヤンはそれを憂慮していたが的中してしまった。もちろん対策を考えていたヤンは敵を退ける。
最後に、中立のはずのフェザーンでは、ルビンスキーによる策謀が開始していた。
以上、あらすじ。
「雌伏篇」はフェザーンの自治領主による策謀と同盟の中央にいる政治家の腐敗が目につく巻でした。
あとはヤンの息子的な存在「ユリアン」が軍人として才能を見出されてきました。帝国では自分の半身ともいえるキルヒアイスを失い姉も離れたラインハルトを周囲の一部が心配する。寂しさや孤立感などから絶対的な権力を手にしている今、何かしでかすんじゃないか?的な。今回、彼の出番は少なかった。
終わり方から、フェザーンの暗躍により次回は直接対決が見られるのか、それとも陰謀を察知して別の動きがあるのか、という感じに楽しみなってきました。愛蔵版で読んでいるので、次の「策謀篇」もすぐに読み始められるのです。
銀英伝は宇宙を舞台とした物語だけど、示唆に富んだ言葉が端々に出て来ます。歴史ものと同じ感覚でこの本を読んでも良さげ。SFの体だけどアナログくさい感は否めませんし。
でも、こういうのを読むとゲームの「大戦略」とかやりたくなるんだね。そしてAIに敗北し、自分がヤンやラインハルトではないことを知る…
「気になる言葉をピックアップ」
ラインハルト
「体制に対する民衆の信頼をえるには、ふたつのものがあればいい。公平な裁判と、同じく公平な税制度。ただそれだけだ。」
ヤン
「…古来、多くの国が外敵の侵入によって滅亡したといわれる。しかし、ここで注意すべきは、より多くの国が、侵略に対する反撃、富の分配の不公平、権力機構の腐敗、言論・思想の弾圧に対する国民の不満などの内的要因によって滅亡した、という事実である。」
ヤン
「国家とは、人間の狂気を正当化するための方便でしかないのかもしれない。」
ヤン
「国家が消滅して最も困るのは、国家に寄生する権力中枢の連中であり、彼らを喜ばせるために人間が犠牲になる必要はない。」
ユースフ
「戦争を登山にたとえるなら、登るべき山をさだめるのが政治だ。どのようなルートを使って登るかをさだめ、準備するのが戦略だ。そして与えられたルートを効率よく上るのが戦術の仕事だ。」
ロイエンタール
「勝因のない勝利はあっても、敗因のない敗北はない。」
ヤン
「明確に目的を持ち、それを達成したら執着せずに離脱する。ああでなくてはな。」
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