かねてより読みたいリストに入れてあった小説です。
時代は西暦2801年。銀河連邦が成立し、宇宙暦1年と改元されました。
そして同じような時代が続くと停滞と退廃が訪れる。あるとき、ルドルフという人物によって銀河帝国が創設される。
初代皇帝の彼は初めは理想高き人物であった。民衆の圧倒的な支持を得て連邦を帝国政府に造り替えたはいいが、徐々に保身に走り法律を変え、独裁的な権力を握るようになる。
そしてまた時が流れ、宇宙暦796年、帝国暦487年となり、帝国の圧政から逃げ出した「同盟軍」と、同盟を反乱軍とみなす「帝国軍」との戦いが舞台となる。
読んでいくと、如何せん古い感じはありますね。身分が公侯伯だったり、皇帝も直系の世襲だったり(摂政政治だけど) 導入だから主役を際立たせるため分かりやすくしたのか、太平洋戦争辺りの舞台を宇宙に置き換えた印象。
そして、現代より1500年も後世の設定なのに人がまったく変わってない。上層部のお偉方の考えが旧態依然すぎますよ。いつの時代も老人は成功体験と保身。
もう少し人類として成長していて欲しかった。でも場合によっては退行することもあるし、科学だけ進んでも人間自体は何も変わらないのかも。
名言というかイケてる表現が結構でて来る気がします。
「番犬は強く、しかも御しやすくなければならない」とか。
荒廃した人類故郷の地球を「未来を所有せず、過去のみを所有」とか。
まだ最初の「黎明編」しか読んでいないので多くは語れませんが、今後の展開が非常に楽しみです。
簡単にあらすじを。
人類は銀河系に広がり銀河連邦を、時代が変わって銀河帝国を構成していた。
帝国初代皇帝が敷いた独裁制。その帝国の圧政に耐えられず、一部の有志が銀河の辺境に逃げ、秘かに「自由惑星同盟」を建国する。
時は経ち「同盟」は銀河に広がっていった。「帝国」は逃亡した一派のことは忘れてしまっていた。
あるとき、銀河のとある場所で「帝国」は偶然に「同盟」と出会ってしまう。過去を思い出した帝国にとって、同盟軍は反乱軍である。両者は対立。
また、第三勢力として「フェザーン」という外交で巧みに立ち回る自治領があった。
フェザーンは規模は小さいが地理的な要所を押さえ、経済力を活かし、帝国や同盟を操って生き残りを図ろうとする。
銀河帝国にはラインハルトという天才がいて、子供の頃からの親友で腹心がキルヒアイス。
ラインハルトは美しい姉が皇帝に召し上げられ、取り戻すために軍人になり皇帝に近づく。彼には野心があり、初代皇帝のように銀河を手中にしようとする。
一方同盟軍にはヤン・ウェイリーがいる。ヤンは歴史好きで戦史も学び、故に戦術、用兵に長けていた。野心家ではなく争いを好まないタイプ(軍も学費返還が免除されるから入った)
ヤンは一時的にでも休戦状態になればと戦いに手を貸すが、能力を買われ戦いに巻き込まれていく。
ラインハルトの帝国、ヤンがいる同盟軍、そして一見中立のフェザーン(実は…)が絶妙なバランスで銀河を分け合っている。これからどうなっていくのか。
そんな折、帝国皇帝急死の報が。帝国は分裂?フェザーンの黒幕が実は…
黎明編はざっくりそんな感じの流れでした。
以降も主役級の人物だと思いますが、ラインハルトとヤン。どちらも戦略を立てる能力に秀でていて、その優秀さを読者に見せつけてくるのが黎明編だと感じました。
大艦隊を率いての戦いが何度か行われますが、ラインハルトは姉が皇帝の寵愛を受けているため、邪魔はさほど入りません。
しかし、ヤンの方は作戦に異を唱えても上官に聞き入れられず、無謀な戦いに借り出され、いかに部下を死なせないかと腐心します。彼は戦いを好まず穏やかに暮らしたいため、軍を退役しようとしますが聞き入れられません。
もう一つ対比でいうと、ラインハルトは美男子でヤンは慕われる好人物。
しかしラインハルトとヤン・ウェイリー、彼ら以外の軍の上層部があまりにも無能すぎる気がしました。人類が宇宙に広がり、人口がものすごく増えた中から選ばれた人たちが、揃いも揃ってあんなに酷いわけない。(もちろん、まともな人もいます)
ま、古い勢力が去って、ラインハルトとヤンが台頭する新たな銀河史の始まりということかな。
あと戦いが平面的な感じを受けます。宇宙空間なのに。それは私のイメージ不足かもしれませんが。でも人間ドラマと政略と戦略が絡みあってどんどん面白くなっていきそうなのよ。それであれこれ口を出したくなってしまう。
今回の銀河英雄伝説は「黎明編」でまだ始まったばかり。次は「野望編」です。
スムーズに読み進めるため、なに編があるかおさらいしておきましょう。(借りる順番があれなので。年に一冊ずつ読み進め、終わるまで死なないという目標にしようかなw)
1 黎明篇
2 野望篇
3 雌伏篇
4 策謀篇
5 風雲篇
6 飛翔篇
7 怒濤編
8 乱離篇
9 回天篇
10 落日篇
外伝
1 星を砕く者
2 ユリアンのイゼルローン日記
3 千億の星、千億の光
4 螺旋迷宮
5 黄金の翼(創元SF文庫。市の図書館に無いなあ)
5 短編集(らいとすたっふ文庫。これも無い)
ユリアンというのはヤンが庇護する少年。子供みたいなもの。
著者は田中芳樹氏。
kindle版の表紙 ↑ が素っ気ない。
壮大なスペースオペラということでは、過去に読んだアシモフのファウンデーションシリーズ(前に書いた記事)を思い出します。そっちももう一度読み返したい。
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