「かがみの孤城」(辻村深月)


辻村さんの本は四冊目。

「鍵のない夢を見る」(これはまだブログを書いてない頃)、「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」と「島はぼくらと」は感想を残しました。

これは不登校になった中学生の話だ。

 

中学一年生の「こころ」は学校に行けず、しかも今日はそういう生徒のためのスクールに行く初日だというのに、またお腹が痛くなってしまった。

行けなくなった原因を思い出していると、部屋にある鏡がまばゆく光る。近づいて触ってみたら吸い込まれるような感覚。そして気がつくと、そこには狼の面をつけた女の子が立っていた。

女の子が自分の名前を呼ぶ。アニメか舞台の世界に迷い込んだようだ。どこだろうと周囲を見渡す。そこには城が建っていた。オオカミの女の子がいう。「安西こころさん。あなたは、めでたくこの城のゲストに招かれました。」

(言っとくけど城のイメージは西洋風ですよw)

急にファンタジー要素があるのに驚いたのですが、これは冒頭から非常に引き込まれました。

 

城は昼の間だけ行き来自由になっていて、「こころ」の自室にある鏡がその通路となっています。

実は城に招かれたのは「こころ」だけではありません。他にも何人かいて、皆もほとんどは学校に行けない子。ただ事情はそれぞれに違うみたい。

 

城内には自分だけが使える部屋があり、どうもそこは人によって設備が異なるみたいなんだよ。ピアノが置いてある部屋もあれば、「こころ」の部屋は本棚にカッコいいと思っていた北欧言語の童話などが並んでいたりして。

何か学校とは関係なく本人の意識ややりたいことが詰まった部屋なのかな、と思いながら最初の方を読んでいました。

 

その後、途中で一度クライマックスがやって来て(一つの謎解きがあった)、感情が高まりすぎてしばらく休憩したけれど(笑)

この辺までなら書いてもネタバレは大丈夫かな。まだ導入の部分。

もうさ、最後はすごかった。この本は強くお勧めするので読んでみて欲しいです。

 

 

生き物の世界は弱肉強食と言うけれど、優しい人が生き残れず、無神経な人ばかりが残ってしまう世界ってどこに向かってるんだろうなって感じ。

ただ優しい人たちばかりで集まっても、結局はその中でまた強いものと弱いものが出来てくる。人間てどうしようもない。そうしないと種として存続していけない仕組みなのかもしれないけど、そこを何とか乗り越えないと次の時代はないのかなって感じ。

 

実際の不登校でも理由はそれぞれあるだろうし、それを経験した人が読むとどう感じるかはわからないけど、私の感想だととても良い本で、ストーリー的に退屈な部分もまったく無かった。最後も怒濤の攻撃でした。

 

小説の中で、スクールの喜多嶋先生が、「何が何でも学校に戻ることが良いとは思っていない。選択肢は他にもある。」ということを伝えたのが重要だと思う。そういうことを小中学生にも知って欲しい。

例えば選択肢の一つの「元の学校に戻る場合」でも、話が通じない人たちとはクラスを離すと取りはからってくれてある。

もうね、話し合っても通じない場合は通じないのだから、宇宙人だと思って互いに別の場所で離れて暮らせばいいんだよ。違った次元で生きているのだし、理解し合おうと時間をかけても無駄ということはある。

 

学校に行かないということはいわゆる一般的に多くの人たちと違ってしまうということですが、その代わりに普通では出来ない体験が出来ることもあるという話でもあるよね。

2018年の本屋大賞。本屋大賞のノミネート作品を全部読むわけじゃないので、その中でも自分でチョイスするって何か引っ掛かるものがあるんでしょうね。

 

もう学校に行く必要もないんだけど、友のために自分を奮い立たせた場面もちょっといい。

私は今日、学校の、あの教室に行くんじゃない。学校に行くんじゃない。
私は今日、友達に会いに行くんだ。
その場所がたまたま、学校なだけなんだ。

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