『島はぼくらと』(辻村深月)感想


舞台は「冴島」という瀬戸内の島で、本土からフェリーで20分という設定です。Iターンやシングルマザーを多く受け入れるようになった島。

ひと言でいうと、

キーワードとしては、Iターン、Uターン、移住、故郷。
島の高校生四人組と、つらい過去から島へ逃げてきた大人たちが織りなす話。

 

なにかあって島に移り住んだような訳ありの移住者が、物語の鍵となるコミュニティデザイナーの力も借りて、元からの島民と人間関係を築いてきた様子が前半の核となる。あと全編を通して島の四人組高校生の青春物語だ。

 

移住者の一人は元メダリストの女性。

人は他人の栄誉や死や何にでも乗っかり、自分が生きる物語の意味を見出す。イベントのように消化する。

彼女は不倫で子を身ごもる。かつてメダルという栄誉を勝ち得たことで、故郷の変化に疲れてしまっていた。それで、すがるようにシングルマザーを受け入れていると偶然見つけた冴島に来て。という話が一つ。

 

まあ移住には「逃げる」という意味合いもあるからな。

人にも場所にも良い面、悪い面がある。それでも何とかここでやっていくと決めるのは、良い面の方が上回るからだろう。

 

フィクションだけど、田舎への移住に興味がある人には全くの無関係というわけでもない小説でした。女性目線ではありますが。

「女が田舎で生きていくのに、おじさんたちにへこたれてたら何もできない。」というような気合いが入った女性の話でもありました。

なんか、さらっと映画を観ているような本だったな。

 

冒頭に登場した「幻の脚本」がしばらく出てこずに、一体何なんだろうと思っていたけど、それも最後にワクワクする展開に。ラストの高校四人組と脚本の謎が絡むあたり、青春物語だなあという感じになるよ。

予約してなかったけど、図書館で見かけて借りてよかった。そんなにすごくあれってわけでもないけど(なんだそりゃw)爽やかな読後感。

 

でも男よりは女性向きかもね。前半は読むペース遅かったけど後半はどんどん読み進めた。

島という閉鎖された地域の独自性。島を出て行くことや住み続けること。外から来た移住者や島の高校生が絡む日常。ほんとに映画のように映像が浮かぶ。

 

蛇足:

辻村深月さんは「鍵のない夢を見る」、「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」に続き三作目。「ツナグ」は買ったような気がするので実家にあるかも。

「冷たい校舎の時は止まる」とか「子どもたちは夜と遊ぶ」とか、タイトルが印象的な作品が多いので読んだような気がして読んでないものばかりでした。

「凍りのくじら」は札幌の図書館で椅子に座って数ページ読んで気持ちよくウトウトしたという思い出がw

 

あと、島と行き来するフェリーって、広島の宮島に渡る時と福岡時代の能古島くらいしか経験がないです。過去には利尻礼文くらいか。すごく揺れたけど。

諏訪湖のフェリーは子供の頃に乗った記憶がうっすらあるけど定かでない程度の記憶だし、フェリーというか遊覧船だしw

市内の平地育ちで「山はぼくらと」っていう程ではありませんが、山国育ちからすると島の生活ってある種憧れを感じますよ。一度住んでみたい気もします。でも、小さい島だと飽きてしまうのかな。

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