「銀河英雄伝説」(風雲篇)あらすじと感想


今回は風雲篇です。前回まで「1:黎明篇」、「2:野望篇」、「3:雌伏篇」、「4:策謀篇」と来ました。内容を忘れてしまうのであらすじを書き留めます。申し訳ないっす、ネタバレしています。

 

感想としては、いよいよ始まったという感じ。ラインハルトとヤンが直接対峙し合う期待感がありました。中立のフェザーンまで進軍してきた帝国が、いよいよ自由惑星同盟を落としにかかる篇です。

なんか多少古い感はある。でも文章が素晴らしいのだと思いますが、読み始めると本の厚さにかかわらず次へ次へと読み進めたくなってしまう疾走感がありますよね。

専制と民主制という対比もありますが、民主制については今書いてるんじゃないかという感もあり、でも権力者についてはいつの時代も似たようなものなのだろうなという感想です。知らんけど。

 

以下、あらすじです。

 

帝国側、ミッターマイヤーの出陣から開始。フェザーン回廊の自由惑星同盟側出口の確保が目的。(後続軍のため)

迎え撃つ同盟側としては、回廊の出口で戦わず深くまで入り込ませてから叩く作戦。(敵が補給しにくい) 帝国もそれを予想していた。同盟の新任総参謀長チュン・ウー・チェンは、イゼルローン要塞を守るヤンを中央に呼び戻すことを進言。

ヤンは司令長官のビュコックから「最善と信ずる行動をとられたし」との訓令を受取り、イゼルローン要塞を放棄する。帝国のイゼルローン方面指揮官ロイエンタールはそれを予想し余計な争いはしなかった。ヤンは軍民含め500万人を離脱させ、イゼルローン要塞は2年半ぶりに帝国軍の手に。

 

ラインハルトは要塞奪還の報告を受け、前線に立つためフェザーンを発つ。一方フェザーンの自治領主ルビンスキーは地下に潜んでいた。

フェザーンに駐留していたユリアン(ヤンが保護者となっている)は、同盟領に戻るため商船によって任地を脱出した。彼は同行した乗客の地球教司教デグスビイに関心を抱く。

 

ミッターマイヤーはフェザーンより同盟領奥に進軍し、ポレヴィト星域で後続のラインハルトらと集結、かつてない膨大な兵力となった。ポレヴィト-ランテマリオ星域間に有人惑星がないことから、同盟軍が決戦場に選ぶと予想する。

戦力の過半を三年前のアムリッツァ会戦で失った同盟は、まともな戦略を立案できずランテマリオ星域で敵を迎えるしか選択肢がなかった。首都ハイネセンがあるバーラト星系から艦隊を向かわせる。

 

戦いが始まり、兵力に劣る同盟軍は打撃を受ける。イゼルローンから到着したヤンは帝国艦隊の背後から現れ敵を混乱させると、壊滅を免れた同盟軍と首都防衛のためにハイネセンに向かう。その途中フェザーンを脱出したユリアンと合流することになった。戻ったヤンは元帥に昇進。

 

ラインハルトは帝国軍をガンダルヴァ恒星系の惑星ウルヴァシーに移動させ、軍事拠点を建設しようとする。

ヤンの戦術としては、もうラインハルトを戦場で倒すしかなかった。それによる後継争いで同盟と戦っている場合ではなくなると。(大昔の合戦で大将の首さえ取ればというやつですね)

 

再開したヤンとユリアンは地球教、ラインハルトについて話した。実はヤンはラインハルトを倒すことが人類のためになるのだろうかと疑問だった。彼は同盟だけでなく帝国の民衆という視点でも考えていた。

 

ヤンは立場上自由に動けるようになり、この時期、後に「軍事活動上の芸術」と称される動きを見せる。まずウルヴァシーへの輸送船団を叩いた。

ラインハルトはヤンの居場所を探さねばならない。ヤンは来る追っ手をことごとく叩き、ラインハルト本人を引きずり出そうとしていた。そしてそれに乗るように、ついにラインハルトは自分がヤンと直接対峙する作戦を立てた。

 

決戦に先立ち、ヤンは決死の思いでフレデリカにプロポーズをする。そしてバーミリオン星系を目指した。ユリアンは二人を祝福しつつ、戦いが終わったら帝国領の地球(人類の故郷)へ行ってみようと考える。

バーミリオン星系での会戦は熾烈を極めた。戦況は二転三転し、最終的にヤンがラインハルトの旗艦ブリュンヒルトに迫ろうかという時、首都から無条件停戦命令が届いた。

実は展開していたミッターマイヤーとロイエンタールはラインハルトを救いに戻るはずがヤンの速さで間に合わず、首都ハイネセンに向かっていたのだ。それはラインハルトが戦うことに意義を見出して却下した作戦だったが…、同盟の首都は防衛策がなく降伏を選択する。

 

ラインハルトは勝ちを譲られた形になり、自尊心を傷つけられる。ヤンはスケープゴートにされないようメルカッツを離脱させる。(しかしそれは復活の布石でもあった)

ラインハルトはヤンを旗艦に招き、二人だけの会談が実現した。これからどうすると聞かれ、ヤンは退役すると返答。

 

同盟首都に降り立った帝国と同盟との間に「バーラトの和約」が成立。内容は、同盟の名称と主権は存続させるが、帝国の属領となった事実を確認し、今後帝国に歯向かう力を得ないようにするものだった。

亡命していた銀河帝国正統政府は消えだが、幼帝が逃亡していた。首都をフェザーンに移す構想や人事で多忙なラインハルトは意に介さず。

 

一方、ヤンは退役しフレデリカと平穏な生活を送る形を取っていた(メルカッツのことは忘れてない)。ユリアンは帝国領奥深くの地球に潜入する準備を始めた。

いにしえの地球では何やら画策が行われていたが、帝国に凱旋したラインハルトはゴールデンバウム王朝を終わらせ、自らが皇帝となった。

気になる言葉

ヤン
「人類が文明を発達させえたのは、楽をしたいという一心が好結果を生んだのであって、心身の酷使を是とするのは野蛮人でしかない。」

ラインハルト
「私は勝つためにここに来たのだ。そして勝つためには戦わねばならぬし、戦うからには安全な場所にいる気はない。」

ヤン
「結局、愛国心とは、ふりあおぐ旗のデザインが互いに異なることを理由にして、殺戮を正当化し、時には強制する心情であり、多くは理性との共存が不可能である。とくに権力者がそれを個人の武器として使用するとき、その害毒の巨大さは想像を絶する。」

シェーンコップ
「ところがあなたは、戦っている最中にさえ、自分の正義を全面的に信じていない人ですからな。」

作者
「残酷さが彼らの戦う目的ではなかった。だが正義と信念こそが、この世で最も血を好むものであることを、誰もが理解せざるを得なかったであろう。」

ヒルダ
「一億人が一世紀間、努力を続けて築きあげてきたものを、たった一人が一日でこわしてしまうことができるのですわ。」(保身から降伏した同盟の権力者を蔑んで)

ラインハルト
「民主共和制とは、人民が自由意志によって自分たち自身の制度と精神を貶める政体のことか。」(同盟の市民が選んだ元首が自由惑星同盟を売り渡したことを受けて)

ヤン
「専制政治の罪とは、人民が政治の害悪を他人のせいにできるという点につきるのです。」

 

次は「飛翔篇」です。帝国対同盟という構造からここまでは規定の筋としてあると思いますが、一応の決着がついた今、今後はどのような展開が待っているのか期待ですね。

布石として離脱させたメルカッツや地球教の存在、また潜伏しているフェザーンの元領主など、展開のキーとして関わって来そうです。

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