亡き母は美しき伝説の女優だったのに、醜い容姿から苛められている少女・累(かさね)。
醜いがために理不尽な仕打ちを受けてしまう。
小学校の学芸会がきっかけで、母の「欲しいものがあれば口紅を…」という言葉を思い出した少女は、自分が欲しいものを手に入れる魔法のようなやり方を知ってしまった。
欲しいもの、それは美しい顔。
累は母の形見の真っ赤な口紅を塗り口づけることで、他人の顔と自分の顔を入れ替えることができる。但しその効果は一日にも満たない。
そして累は母譲りの、女優として誰しもを魅了する類い希なる演技の才能を持っていた。
大人になった時、あるきっかけで美人女優であった母のことを知る男(羽生田)と出会う。
彼は累の口紅の秘密を知っていた。女優としての秀でた才能も。
また、彼の知り合いに美貌ではあるが演技で評価されずに悶々とする女優(丹沢ニナ)がいる。
羽生田はその圧倒的美貌を持つ女優のニナと累を会わせる。彼はある思惑を持っていた。
そして美貌のニナも累の衝撃的な秘密を知り、彼女の演技力を欲するようになる。やがて三人の思惑は一致し、舞台で演技する時だけ顔を交換するようになるが…
(ざっとあらすじを書いたら演劇ということでガラスの仮面を思いだし少女漫画っぽいですね。私は物語の好みにちょっと女子が入ってる感はありますが、これはもともとイブニング連載ですし男でも面白いんじゃないかな。)
この漫画は美醜についての話でもあると思うんですけど、元々醜くて虐げられていた累(かさね)が、入れ替えた美しい方の顔に慣れてしまい、落とした手袋を拾ってくれたおっさんをキモイと一瞬思ってしまうのです。それで、累は醜いものを蔑んだと自己嫌悪に陥るエピソードがありました。
口紅を使わなければ自分も同じ立場なのに、一瞬でも蔑んでしまったと。
ネットでよく見る貧乏人が貧乏人を叩く構造というのがありますが、何にしても一部のトップにいいように扱われているのだろうから、我々下層民(読んでる人で違う場合はゴメーンね)が意識を変えないと、と思いますよ。そもそも矛先が間違ってますし。それに美を感じるのも、どこまでが本能でどこから後天的なものなんでしょうね。
累ヶ淵の怪談というのがあり、それをモチーフにしたそうです。でも怖い話じゃありません。スリルはありますが。
10巻まで借りてきて読んだよ(Tポイントの使い道はこれ)、11巻まで既刊。
4巻辺りから「野菊」という累と関係が深い新たな人物の登場により、また一段と面白い展開になっていきます。
作者は「松岡だるま」という方ですが、アシスタントがセミリタ(無職)関係者にはお馴染みのphaさん関連で知った小林銅蟲氏がやっているようで、巻末のおまけのような部分にしばしば登場します。
スピンオフで累の母(=伝説の女優でもちろん秘密の口紅を使っていた)を描いた「誘(いざな)」という漫画でなく小説がでています。漫画でも生い立ちなどある程度明かされていますが、これも要チェックですね。
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