「ローマ人の物語」で有名な塩野七生の作です。まず「コンスタンティノープル」はビザンチン帝国=東ローマ帝国の首都で、現在のイスタンブール。
東ローマ帝国は既に衰退しており、オスマン帝国が勢力を拡大中。周囲を城壁と海で囲まれ要塞として長らく難攻不落だったコンスタンティノープルの最後を描いた歴史ものです。
背景として、住民はギリシャ正教を信仰している。他に貿易のためジェノヴァとヴェネツィア人がいて、彼らは同じイタリアの海洋都市国家でありながら、オリエント市場を争って長らくライバルという関係。また西欧の国たちとしては、キリスト教国がイスラムにのまれるのは避けたいが助ける余裕がない(遅い)。
年代としては15世紀半ばの1450年代。
この陥落により東地中海で今まで通りに貿易できなくなったのが、航海技術に優れたジェノヴァが地中海から出て西を目指す要因の一つとなったというのが興味深い。
Youtubeで歴史授業の動画をたまに見ているのですが、この辺りの解説で先生の話の熱量につい本を買ってしまいました。私のように歴史に詳しくなくても、ここに書いた程度の知識で面白く読めます。
人物一覧と背景(誰が誰かわからないので、途中で最初に戻ってまとめました)
スルタン・マホメッド二世
トルコのスルタン(メフメト2世。スルタンはイスラム教国の君主。オスマン帝国の皇帝ということ)。
コンスタンティヌス11世
ビザンチン帝国皇帝。
上の二人がそれぞれの皇帝で史実に沿ってということですよね。
以下は他の登場人物。創作かもしれませんし、エピローグによると幾人かは陥落について何等かの資料を残したらしい。
ニコロ・バルバロ
ヴェネツィアの医師。軍医として二隻のガレー船でコンスタンティノープルへ向かう。ビザンチンからの援護要請を受けたが立場的に微妙なため大船団は送れず二隻となっている。
ヤコボ・ティダルディ
ターナ(黒海の北沿岸の街)を拠点とするフィレンツェ商人。
ミハイロビッチ
スルタンからの要請でセルビアの騎兵隊を率いる指揮官。当時のセルビアは形式的には友好国だが実質上はトルコの属国になっていたので要請を受けざるを得なく。
イシドロス枢機卿
カトリックの枢機卿。ローマに住むが、祖国ビザンチン帝国を救うためなら東西の教会を合同する派(「ギリシャ正教会」と「カトリック教会」に分裂していた)
ゲオルギウス
コンスタンティノープルに住む修道士。東西合同反対派(対イシドロス)。合同するくらいなら滅びる。またカトリックに吸収されるよりトルコ支配下の方がギリシャ正教として全うできるのではないかという考え。
ウベルティーノ
ゲオルギウスの僧房を訪れるイタリア人の若者。カトリック教徒の留学生だがイタリアに戻るか決めかねていた。
アンジェロ・ロメリーノ
ガラタ(金角湾を挟んでコンスタンティノープルを見下ろすジェノヴァ居留区)の代官。二百年続くガラタというジェノヴァの資産をどう守ればいいのか悩んでいる。
フランゼス
コンスタンティヌスに仕える大臣。若いころから皇帝の秘書官であった。
トルサン
マホメッドの小姓。上のフランゼス同様、皇帝を間近で見守る立場の人ということでしょうね。
様々な視点から陥落を語るためだと思いますが、200ページちょいと大して長くない割には登場人物が多いのよね。
街の周囲は既にトルコ側に占領されていたのですが、コンスタンティノープルはある種の自由港のような立場となっていて、経済的なメリットもあり、勢力拡大中のトルコ側にも共存派(黙認派?)がいたと思われます。
しかし若いスルタンはアドリアーノポリにいて、コンスタンティノープルを欲しいと共存派の宰相に告げます。
そんなこんなで上記の登場人物たちが各地からコンスタンティノープルを目指して集まって来るわけです。
そしてスルタンは難攻不落といわれた都市を陥落させようとするのですが、一体どうやって攻めるつもりなのか…というところ。守る方も実はちょっともう無理みたいな感じなのですけどね。
以降、上の人物一覧を参照しながら読むとわかりやすいと思います。
私の買った本が古かったので確認したら1983年発行でした。
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