読書「幼年期の終わり」


アーサー・C・クラークのSF小説で、Wikiによるとアメリカで1952年に刊行されたとなってます。ずっと積読状態で置いてあったので読めて良かった。

ざっと内容を紹介します。

人類がロケットで宇宙に乗り出そうとしている矢先、世界の都市上に宇宙船団が浮かび、人々は彼ら宇宙人のことをオーバーロードと呼んだ。

しかし彼らは秘密主義で姿は表さないし、上空に留まる目的など一切を地球人には伝えない。

ただカレルレンという彼らの代表が、地球の国連事務総長ストルムグレンと連絡を取るだけ。(もちろん姿は見せず音声のみだが完璧な英語で会話をする)

 

彼らは特に酷くない限り各国の内政に干渉することはしなかった。しかし圧倒的な技術力を持つ彼らが常に存在することで、地球内の地域同士の争いは無意味となり、全精力が建設的な方向に向けられた結果、人類の暮らしは徐々に改善されていく。

圧倒的に上位の存在が目的も分からず自分たちを見ている。神のような存在に見られているということです。その状態のまま時間は何十年も経過しますが、果たして彼らの目的は何か。彼らはどういう存在なのか。というのが先ず一つの謎。

 

三部構成になっていて、上記の彼らの出現が第一部。その最後にカレルレンは50年後に姿を見せるという約束をします。

そして第二部は約束の50年後から。いよいよ姿を現しますが、地球上の伝説に出てくるような恐怖を感じる姿をしています。ここは彼らが先史時代に地球人にコンタクトを取って失敗していて、人類から恐れられる存在として記憶されていたと考えるのですが…

 

カレルレンらの静かなる監視の下、(あれこれ企てても露呈してしまうので)野心的なものに抑止力が働いて戦争や犯罪がほぼなくなり、パワーを進歩の方向に向けた結果、50年後には人類の理想のような世界になっているのよね。

例えば、無人工場で生活必需品が生産され実質無料になっていたり。

「人間はただ自分が望む贅沢のために働くか、それともまったく働かないかのいずれかだった。」

この部分は、私が生まれる前に既にこういう発想があったんだなと感慨深い。

 

さらに、人間が以前より分別に富むようになったり(「貧すれば鈍する」の逆)、安逸な生活も悪くないと見直したり、興味がある事は生涯に渡って勉強できるようなシステムになっていたり。

まあこういう部分はある面での理想が書かれているんだろうなと思う。

しかし趣味でアマチュア科学者レベルの人間は増えても、逆にオーバーロードなら既に解明しているであろう科学の謎を一生かけて求めるのを無益に思ったのか、人類を進歩させるような創造的な仕事をするものは減り、徐々に技術力は衰退していく。

 

一見オーバーロードのおかげでユートピアが出来上がったかのようでした。しかしオーバーロードは戦争や飢餓や疾病を撤廃したものの、同時に冒険まで失わせてしまっていたのですよね。

実際に人類が宇宙に飛び出そうとしていた、まさにその時に彼らはやってきたのだし、それによって人類は自分の力で宇宙に出られなくなってしまっていました。

そういう事実もあり、まるで緩やかに支配されているようで、彼らの政策が必ずしも人類の真の福祉と一致するのか、その時代になっても疑いを持つものはまだ存在したのですよ…

 

ここまでが大体1/3くらいまでです。

その後、一人の青年がコックリさん的なものに立ち会ったことから話が展開していきます。人類が知りえない情報を、どういうわけかレシーバー的な人物が受け取ったのではないかと推察される事件が起きます。急に変わった方向に話が進むんです。

 

オーバーロードの目的をネタばれすると(もうほぼ今回は終了です。知りたくない方はここまでで)、

地球人はまだ超物理学、超自然現象というような方向へ進化の余地を残しており、人類をこのまま放置した場合に宇宙史に悪影響を及ぼす存在になってしまう。それを検知した上位の存在からオーバーロードが命を受け地球人を見守っていた。というようなことです。そして悲しいかなオーバーロード自体は、そちらの方向に進化できない定めらしい。

上を読んだからといって、他にも今回書かなかった部分があるので面白みが損なわれるものではないと思いますが。

 

やっぱSFはいいです。わりと色んな物語に抵抗が無いのは、若いころから少しでもSFに親しんだからかもしれません。逆かな?

またこういう名作古典にもちょくちょく手を出してみたいと思います。タイトルは人類としての幼年期が終わったということでしょうね。

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