「人工知能は人間を超えるか」を読んだよ。その2


その1からの続きです。

これまで人工知能が直面していた問題は「概念」を自ら獲得することができなかったことです。

人間は生まれたときから実物でも写真でも様々なものを見ては特徴を切り出し、これはネコ、これはウマ、これはシマウマだという概念を覚えていきます。初めから猫という単語は知りませんが、目と耳と鼻と口がありちょっと髭が生えていて前身が毛に覆われている生き物という存在の一括りを他の動物とは区別するようになります。

ある日、それを「猫」や「cat」だという名前だと知りますが、記号としての名前ということではなく、「ネコ」というひとまとまりの動物がいるのだということを自然と学習していきます。

 

ある動物がゾウかキリンかシマウマかネコかを見分けるのは人間には簡単ですが、コンピューターにはきわめて難しいものだった。しかし「ディープラーニング」によってそれ解決する糸口が見えてきているとのこと。

目と耳と鼻と口があるのは猫だけでなく、犬も人間もそうです。今まではその区別を助けるための特徴量なるものを人間が教える必要がありましたが、その人間の手による知識の植え付けが不要で、人工知能自らが学習していくようになったことで人工知能研究の新たなブレイクスルーを迎えたということです。

 

ねこすみませんでした

どうやってそれを獲得したかは上手く説明できないので(詳しい原理は理解できていない)、本書の後半部分を読んでください(笑)

 

本書では「特徴表現学習」という呼び方をしますが、ディープラーニングは多層階のニューラルネットワークで、今までやろうとしても上手くいかなかったとのこと。(階層ごとの学習、情報の圧縮というのが今までの試みと異なるようです)

コンピューターが莫大な画像データを読み込むうちに、丸や三角などある共通の部分があると分類したとします。その相関があると分類された特徴を元に更に高次の共通の特徴を調べ抽象化していく(丸の中に丸が二つという特徴から顔らしきものが出てくる等)…ということを、深い層まで(なのでディープ。渋谷哲平じゃないよ)追っていくと、コンピューターがあるまとまりに到達したとします。

それを人間が見て分かるようなもの、例えば典型的なネコの顔を表しているようだと分類されていたとしたら、コンピューターにそれは「ネコの顔」と言うのだと教えてあげればいいとのこと。(なので人間には意味不明な新たな概念を見つけ出す可能性もあるということが面白いしやばい。知能と言っても人間とは別のものかもしれないということ)

 

ただ、このディープラーニング(深層学習)によって、すぐに本来の意味での人工知能が実現するというのではなく、今まで人間がコンピューターに教えなければいけなかったデータの特徴(どこに着目すればいいかということ)をコンピューター自らが学習するという問題で一つの解を示したということが画期的だということなのです。

これは研究を飛躍的に発展させる可能性を秘めているとのことですが、その実、ディープラーニングでやっていることは、(アンケート調査で行うような)主成分分析を非線形にし、多段にしただけである。(分かる人にはこれで分かる?)つまり、データの中から特徴量や概念を見つけ、そのかたまりを使って、もっと大きなかたまりを見つけるだけであると。

 

興味深いと思ったのは、人間が心地よい不快などを感じるというのは生存に有利なようになっているはずですが、人工知能がそういう本能に直結するような概念を獲得するのは難しいのではないかということ。自動運転のような特化したシステムは作れても、ドラえもんはなかなか難しい。

 

この本ではシンギュラリティというのは、人工知能が自分の能力を超える人工知能を自ら生み出せるようになる時点を指すとあります。自分より賢いものを作ることを繰り返すことで圧倒的な知能が誕生するということになり、果たしてそうなるのか、そうなった時にどうなるのかということで議論があるのです。

本書を読んだ感じでは、特定の分野で秀でた能力を持たせることは比較的できやすいかもしれませんが、果たして人工知能に意識というものが芽生えるのかについては難しそうに感じます。

齟齬なく人の相手をすることは可能になるのでしょうが、自己を守る必要があるというプログラミング(修理しなくてすむようになるべく故障しないよう自己を守る)が、自己を複製したい、繁栄したい、人類が邪魔で滅ぼしたいという意識になることは遠いような気がするのですが。

 

ただ一度自分を超える能力の知能を生み出せるようになれば無限に能力は進んでしまうので誰にも制御はできなくなるということですね。そうなると人間の味方をしてくれるのかは全く不明です。

DeepMindのように、ゲーム画面を見て得点を得るよう自らプレー方法を学習する。ゲームの種別に依存しないで、汎用的に学習できるというものが既にあるようですし、妄想になりますが人間以上に発展した文明を発見できないのは、ある程度進んだ文明は人工知能のようなものを開発したが故に滅ぼされてしまっていたりして。でもそれなら人工知能軍団が地球を滅ぼしに来ていてもおかしくないし。わけわかんなくなってきた(笑)

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コメント

  1. ひろし より:

    興味深く読ませていただきました。以前私もコメントしましたが、
    AIの進化は個人的にとても関心が高い話です。(難しい事はわかりませんが)
    AIが自らプログラムするようになったら、世の中どのようになって
    行くのか楽しみであり、恐怖でもありますが、怖いもの見たさの欲求
    を抑えきれません(笑)

    1. じゅんぺー より:

      >ひろしさん
      ありがとうございます。理系記事はあまり人気ないので(笑)
      ほんと、楽しみでもあり恐怖でもあるということだと思います。
      詳細はよく分からないのですが、生きてる間にかなりの進展があるのかないのか、長生きしたいとすれば世の中がどうなっていくのか見てみたいって部分も大きいですよね~。

  2. アーベル より:

    こんにちは。
    人工知能がついにクローズアップされるようになってきましたね。現段階では人工的なものが人間のように判断し学習できるようになるということなのでしょうが、SFにおける人工知能の究極の目標の一つに人間の人格の再現があります。人間の脳内の人格や記憶を正確に人工ハードにコピーできないか。これが可能になれば事実上人間は不死になります。さらにそれを生身でできるようになれば不老不死の完成です。銀河鉄道999のメーテル、エヴァンゲリオンの綾波レイというところでしょうか。彼女たちは人格や記憶をバックアップする装置のようなものが肉体とは別にあって、端末である肉体が死んでもクローンの別の肉体にすぐに人格、記憶をダウンロードして復活していました。

    いつごろできるんでしょう。有機体の寿命を克服することができれば、恒星間航行の可能性も現実味を帯びてきます。まあその時は自分は生きていないんでしょうね。

    1. じゅんぺー より:

      >アーベルさん
      脳のデータをそのままバックアップして人口の肉体(機械?)にコピーするという時代は、そう遠くないうちに来るのかもしれませんね。
      それが進むと究極の既得権益というか、その肉体を維持するためのエネルギーや物理的な空間の問題から、今行われているような通常の子孫を残すということはなくなるのかもしれないなと妄想しています。死にたくならない限り肉体を差し替えすれば死なないわけだから人口も増やせず一定に統制されるのかなと。同じメンツで誰も死にも生まれもせず、ずーっと何千年も何万年も過ごすのでしょうか(笑)
      もっとも生殖という意味では全人類が人口の体になってしまうと増やせる個体がいなくなり、別の人間を追加しようとしても過去のDNAからのクローンや凍結保存した卵で増やすしかないのでしょうけど。
      最終的には映画マトリックスの肉体の無いバージョン(意識としてのデータが仮想空間で生きているみたいな)になっているかもとか思っちゃいます。

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