『僕だけがいない街』(三部けい)感想


「再上映(リバイバル)」という時間が巻き戻る現象を体験する主人公「藤沼悟」の話。

彼にリバイバルが起きる時、実際は既に何かの出来事が起きてしまっている。彼がある時点に戻った時、その起きてしまった出来事を感じ取り、正しい(と思われる)流れに戻さなければリバイバルは繰り返される。

彼は何度かこの現象を経験済みで、通常は数分前に戻り事故に遭いそうになる子供を助けるようなものだった。だがある日、母の身に起こったことが切っ掛けで18年前の子ども時代へと大きく時間を引き戻されることになった。

 

どうやら今回の母に起こったことが、子供の頃の大きな事件と関係しているらしく、母や同級生を救うために事件の渦中に飛び込んでいく。

ある程度ネタバレしてます。面白さは損なわないと思うんだけど、白紙の状態でいたい人は以下は読まない方がいいかも。(上はまあ予告とか紹介で書いてあるような部分までです)

 

 

そういえば有村架純ちゃんが出ている映画版を観ていたのを思い出しました。

ただ放送するのは知らなくて、何気にTVのスイッチを入れたらやっていたので初めの20分くらいは観れなかった。

原作漫画を読んでから改めて思うと、映画では主に子ども時代のことをメインにエッセンスを取り出し大分端折って作品にしたような感じでしたね。

途中までかなり原作を忠実に再現していた気がしますが、原作での繰り返した時間の後の人間関係の深まりを考えると、短時間では描ききれず原作に敬意を払いわざと違った結末としたのかな、という想像をしました。

 

その映画を観ていたので五巻くらいまでは、既読というか内容を知っている感覚がありました。ただもちろん細かい部分は初めてなので、そういうことだったのかと途中までは映画の謎解きをした感じ。

でも映画版は原作と異なったストーリーになっているため、その後の展開は違ってます。その後って、悟がアイスホッケーを見に行ってからですが。(ちょっと映画はもううろ覚えなので間違ってるかもしれないけど)

 

その後の主人公が辿るストーリーが本来のストーリー(=人生)で、そこがタイトルの「僕だけがいない状態」なのだけど、子ども時代をやり直したことで主人公悟の人生はかなり彩られたものとなります。

同級生を助けようとクラスの仲間を巻き込み必死になったことで、僕だけがいなかった時間も友人達はそれぞれに動いていた。

優しいが物事に踏み込まず時に冷たく感じる面もある子供の頃の悟の性格。外伝の九巻を読むと、繰り返し後の人生で本気になる覚悟を持てたのは、常に悟を見守る母の強い思いもあったのだ。

 

結果的にもうリバイバルは起きなくなり、どうやらやり直した後の時間の流れが正解だったらしいのです。

ただそちらの歴史の流れだと、悟の初めの人生で窮地の時に唯一自分を信用してくれた重要な人物が失われることとなってしまう。

でも想像するに、子ども時代を一歩踏み込む勇気を持ってやり直したことで彼は前向きに変わっています。その人物とはきっとまた互いに信頼できる関係を築いていけるはずという希望が持てる読後感でした。

18年分過去にタイムリープしてもタイミングが少々ずれただけで、結局出会うべき人には出会うんだみたいな。

 

九巻↑までありますが、八巻までが本編でストーリーとしては完結。九巻は外伝です。

九巻には僕がいなかった時の雛月加代と小林賢也の成長(共に小学校の同級生で雛月を救うために賢也と画策する)、悟が子どもの頃の母佐知子の想い、再び出会うまでの片桐愛梨(有村架純ちゃんw)を描いた編となっています。こっちを読んでる時の方が目頭にぐっとくるけどね。

 

私、一巻だけKindle版で持っていて、今回他のマンガとまとめて借りたんすよ。読み返したいのは古本でいいので集めたくなっちゃうけど、また引っ越しの時に荷物が増えて困るよねえ。

 

最後にマンガの後付けにあった話。

映画の撮影現場に挨拶に行った作者ですが、当時6歳のお子さん連れだったそう。出てきてくれた藤原竜也と会話したときに、そのお子さんが「ねえ、デ○ノートもってる?」と訊いたらしいw さっすが。

あと、このマンガには生きていく上で糧となるような良い言葉が沢山出て来ることもオススメ要因。

 

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