「銀河英雄伝説」(策謀篇)あらすじと感想


「策謀篇」を読みました。前回まで「1:黎明篇」、「2:野望篇」、「3:雌伏篇」と来ています。内容を忘れてしまうのであらすじを書きたい。申し訳ないっす、ネタバレしています

 

「マキャヴェリズム」という言葉が目立つ巻でした。どういった手段を用いても、結果として利益をもたらすなら構わないという考え方。

特に中立であるはずのフェザーンなど各陣営も一枚岩ではないため、何かのきっかけで状況が覆るかもという戦国時代的な面白さが際立ちます。策謀篇はまだ前哨戦という趣ですが。

また今や民主主義であるはずの自由惑星同盟が政治的に衰えを見せ、独裁である帝国のラインハルトが民衆に支持される公正な政策を執っているという対比も面白いです。

そのため同盟はヤンの能力を上手く活かせないし、ラインハルトの力はより強大になっています。バランスが帝国に傾いてきたのか、フェザーンは与しやすい同盟を陥れ、帝国に恩を売って、一部の利権だけでも生き残ろうと画策します。

 

以下、あらすじです。

フェザーンの謀で、亡命していたランズベルク伯とシューマッハ大佐が帝国に侵入した。

帝国宰相ラインハルトと秘書官のヒルダは、その目的は(まだ7歳のお飾りの)帝国皇帝ヨーゼフの誘拐ではないかと推測する。ラインハルトに追われた帝国の旧貴族側からすれば救出ともいえる計画。(実はフェザーンの思惑に乗せられている)

皇帝ヨーゼフ:帝国ゴールデンバウム王朝の末裔

 

フェザーンの外交官がラインハルトに提案した筋書きとしては次のようになる。皇帝を自由惑星同盟に連れて行き亡命政権を樹立させる。帝国は同盟を討伐する大義名分ができる。同盟がいなくなった帝国内においてフェザーンは今以上の地位を得る。

ラインハルトは言葉通りには受け取らず帝国と同盟を消耗させるためでは?と推測。同盟と組むことさえあり得ると告げ、フェザーンが握っている回廊(宇宙空間での航行路)の明け渡しを要求する。

要するに、フェザーンはラインハルトを利用し勢力の拡大を謀った。ラインハルトはそれに乗った状況でフェザーン回廊を通過して同盟を攻める思案をしていた。フェザーンが握る回廊を通過できれば、ヤンがいるイゼルローン要塞を攻略する必要がなくなるからだ。

 

幼い皇帝の誘拐作戦は実行され、自由惑星同盟幹部は極秘に亡命を受け容れる。亡命政権は「銀河帝国正統政府」と称した。同盟の首都上層部の思惑としては、正統政府がラインハルトを打倒し復帰した暁には帝国と不可侵条約を結び対等な関係を築きたい。

同盟と銀河帝国正統政府(旧ゴールデンバウム王朝派の残党)はかつての敵だが、今やラインハルトという共通の敵をみて利害が一致。

 

ヤンのイゼルローン要塞では、ラインハルトがわざと皇帝を逃がしたのではないかと推理。フェザーンの関与もあるのではないかと考える。加えてイゼルローンの人々の内心は首都中枢には反対であった。そして、ラインハルトは誘拐犯(正統政府)と手を組んだとして同盟に宣戦布告。

 

その折、ユリアン(ヤンが庇護する青年。息子みたいなもの)はフェザーンへの駐留を命じられてしまう。ヤンの本心では行かせたくなかったが、帝国とフェザーンが手を組んでいる可能性から、信用できるユリアンにフェザーンに赴くよう説得した。

ユリアンはビュコック提督(同盟幹部で唯一話しがわかる人)への親書をヤンから預かり、フェザーンへと出発した。

 

一方、ラインハルトはフェザーンの駐留弁務官ボルテックと密約を結んでいた。ボルテックがフェザーン回廊を通過する便宜をはかり、ラインハルトはボルテックの要請があれば現フェザーン自治領主を放逐してボルテックを後釜に据えるというもの。

また帝国民衆は、ラインハルト体制で得た公正な権利を、ふたたび旧体制の貴族に奪われるのを恐れ同盟及び亡命した正統政府(旧王朝派)への宣戦布告を支持する。

 

首都を経由したユリアンは、ビュコックにヤンの親書を渡した。そこにはフェザーン回廊を経由する可能性が示唆され、防ぐとしたらフェザーン人による市民的抵抗によるしかない、ということだった。要はフェザーン人の独立精神を喚起する世論を流行らせるしかないと。

ユリアンは歓迎会の会場で、帝国によるフェザーン回廊通過の懸念を漏らす。フェザーン自治領主は、それによりヤンが既に回廊の件を予想している事を知る。

 

帝国軍の「神々の黄昏(ラグナロック)」作戦は、表向きイゼルローンを侵攻すると公表された(実は陽動) 同盟の中枢はビュコック提督の「フェザーン回廊侵攻の懸念」発言を一笑に付してしまう。

ヤンがいるイゼルローンでは哨戒船がロイエンタール(ラインハルトのすぐ下くらいの人)の率いる艦隊を発見する。戦いは始まってしまった。(実はヤンは軍人にはなりたくなかった)

そして帝国軍は回廊を通過するのではなく、フェザーン自体を占領してしまった!? ただ自治領主のルビンスキーは逃亡し行方がわからない。

 

気になる言葉

ラインハルト
「武人には武人らしく、商人には商人らしく、悪党には悪党らしく接するべきであろう。」

ヤン
「盗賊に三種類ある、とは、誰が言ったことであっただろうか。暴力によって盗む者。知恵によって盗む者、権力と法によって盗む者。」

ヤン
「まったく、世界は、こちらがおとなしくしていれば際限なく増長する連中で満ちみちているらしい。」

ヤン
「現在の状況は古来から固定しているものと吾々は誤解しがちだ。」

ヤン
「人間は、自分が悪であるという認識に耐えられるほど強くはない。人間が最も強く、最も残酷に、最も無慈悲になりうるのは、自分の正しさを確信したときだけだ。」

ヤン
「人類の文明が生んだ最大の病は、国家に対する信仰だろう。だが、国家とは、人間の集団が生きていく上で、互いの補完関係を効率よくするための道具であるにすぎない。」

ヤン
「軍事が政治の不毛をおぎなうことはできない。それは歴史上の事実であり、政治的の水準において劣悪な国家が最終的な軍事的成功をおさめた例はない。」

ヤンが父親から受け継いだ哲学
「自分でコントロールできる範囲の金銭は、一定の自由を保障する。」

次は「風雲篇」です。

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