あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。読んだ~


「やりがい」のために働くことが一番大事で、そのためであれば他のものを犠牲にしても構わない、という従来の働き方とはまた別の選択肢を提案する本。

脱社畜ブログを運営される日野瑛太郎氏の著作です。以前「脱社畜の働き方」(別ブログでの紹介記事)も読んでいます。

  

 

あとがきより

・過労死は企業による殺人と同じ
・『社会人の常識』という言葉は、結局何も言ってないに等しい
・雇われにすぎない従業員に、経営者目線を求めるのはヘンだ
・会社の価値観ではなく、自分の価値観に従って生きた方がいい

問題は、こういった「あたりまえ」のことが、どうも日本では「あたりまえ」とは思われていないようだ、という点にあります。

・一人前でもないのに残業代がもらえると思うなんてありえない
・社員一人ひとりが経営者目線を持って会社の利益のために行動すべきだ
・仕事で大切なのは給料よりも『やりがい』や『成長』だ

こういった独自の価値観が、会社の中では逆に「あたりまえ」になってしまっているのです。

仕事にやりがいを求める人もいれば、やりがいよりも自分の時間を大事にしたいと思っている人もいます。

どちらが正しいではなく、互いに相手の価値観を貶めることなく働けるようになれば、日本の職場も少しは息苦しくなくなるのではないでしょうか。

そのように締めくくっていて共感できます。

「俺が有休を我慢しているのにホイホイ休みやがって」という従業員同士の足の引っ張り合いほど不毛なものはないですし。

 

日本的雇用システム=会社に一生を保障してもらう代わりに、「社畜」として会社に尽くす

しかし、そのシステムは崩壊

会社に尽くす意味はもうなくなった

しかし、会社に尽くすという価値観だけは残ってしまった

これは会社にとって非常に都合がいいこと。社員にメリットはない

 

 

本書にもありますが、「残業ゼロの仕事」を日本で探そうとすると難しい。仕事の分担や、そもそも受注してくる仕事の量を考えると、残業前提でないと終わらないとも言える。

特に私のやっていたソフトウェア開発など、PCの画面上には表示されますが、結果(中身)が形に表れにくい職種です。「どうやっても三ヶ月じゃ厳しいよ」と訴えても、「ちょちょっと出来るでしょ」みたいな風潮はあります。

仕事量が多ければ人を増やせばいいのですが、一旦雇うとなかなか辞めさせにくい現状が、雇用する側もされる側も不幸にしている気がしてなりません。

辞めさせやすければ雇われやすいですよ。それでいよいよどこにも雇われない状況になったら、堂々とセーフティーネットを頼ればいいのですし。

 

 

残業はイレギュラーなものとして、たまにならいいです。しかし残業が続くと、「毎日遅くまでやるなら体がもたん。ある程度のペース配分はしなければ」となり、効率は考えなくなりますね。

毎日終電まで頑張っていては体も神経ももたないし、疲れていい仕事もできる筈はなし。私の体験では結果関係なく誰かに見せるパフォーマンスのための残業になっていて、非常にバカバカしかったです。

逆に成果物関係なくその場所にいるだけで給料がもらえるので、今となっては楽でいいなと思うのですが(笑)

残業前提で仕事を割り振るとか、パフォーマンスのための残業は止めましょうということです。

それでも残業代が支払われればいいのですが。

 

 

ブラック企業について常々思うことが本書にもあります。

残業代を払わないとか、法律を守ることで会社が潰れてしまうのであれば、それはもう潰れるしかないのです。法律違反をしてまで会社を延命させても、社会にとっていいことはありません。

法律というルールを破って会社を経営することがまかり通れば、ルールを厳守している会社は競争でとても不利になります。その結果、法律違反をしている会社だけが存続でき、法律を守っている会社が潰れていくとしたら…

これだと思う。

サービス残業をする社員の側も、それに荷担していると認識しないといけないと思います。

 

全体として日本の会社の競争力が弱くなってしまうという言われ方をしますが、時給を下げて古い仕事をいつまでもやっていてはダメなんだと思う。

多分、それほど必要のない仕事をむりやりやってるからそうなるのでしょうね。実際は別の新しい何かを生み出せればいいのだけど、日本人ってそういうのは潰しがちだから…

そういうことを言うだけなら誰でも言えます。じゃあ何を?っていうのは凡人にはなかなか生み出せないので、せめて優秀なアイデアを出すやつの邪魔をしないようにしなければ。

↑上画像は本書より引用

 

他にも、

日本の治安は世界でもかなり良いと言われるが、労働犯罪に関しては無法地帯に近い

「社会人としての常識」とはいったい何なのでしょう

日本の多くのサービス業は質の高いサービスを低価格で提供しすぎ。サービスにお金を払う意識が無くなってしまった。逆にサービスの質が低いと激怒

日本では「仕事に生きる」のは無条件でいいこと。そのためにプライベートが破綻しても非難する人はあまりいない。一方、プライベートを充実させて仕事はそれなりだと非難される。仕事が何よりも優先

日本は無宗教だというが、「労道」というカルト宗教に支配されている

給料をもらっている以上は責任を持って仕事に取り組め、という一方で、本当に責任をとらなければならない大きな事件が起きた時には、責任のなすりつけあいになる。

元々の責任範囲が明確でないため割に合わない仕事まで押し付けられる。責任の範囲を定めれば、自分の責任範囲の仕事はプロとして遂行することが求められ、それは仕事の質を高めることにもなる。

「将来の夢=なりたい職業」ってそもそもおかしい

学校教育は「有給休暇を取得できる条件」など、労働者が自分の身を守るために必要な知識は教えてくれない

「つらいけど逃げずに頑張ったおかげで成長できた」人はほんの一握り。その陰にはつらい状況に耐えきれず、心や体を壊してしまった人がたくさんいる

責任感が強いのはいいが、心や体を壊してしまったら最悪のタイミングで周囲への責任が果たせなくなる場合もある。どうせ果たせないなら自分が壊れない方法を選んだ方がマシ

職場の人間関係はくじ引きで作られたようなもの。上手くいかなくても、むしろ当然

とか、なるほど!がたくさんあります。

 

これからは会社と自分の人生を切り離し、会社とそれなりの距離をとって働くことが必要。

考え方として本書にあるのは、自分を○○会社の「一員」と捉えるのでなく、自分という人生の経営者だと捉え、一時的に○○会社と「取引」をしているというように考えるということ。

 

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