努力だけではどうにもならない残酷な世界。ますます二割のクリエイティブ層と残りのマックジョブ層の差がはっきりしてくる。そんな世の中で私たちはいったいどうすればいいのだろう。
本書のタイトル「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」の解としては、「伽藍を捨てバザールに行こう」に集約されるのだと思います。(これぐぐったらブログ仲間の正吉さんのブログが一番に出てきましたよ。それってすごいんですよ)
世間から隔離された伽藍(=会社)で評判を上げても、それは世界に広がっていかない。バザール(=グローバル市場)では評判は国境を越えて流通する通貨のようなものだ。ということです。
知識社会においては、さまざまな能力の中で言語的知能と論理数学的知能が秀でた人がきわめて有利で、高収入の職業を独占している。だからこそ人々は知識社会に適応できるよう自分を変えようとするのだが、「わたし」の大半は無意識によってつくられているのだから、それを意識によって変えるのはきわめて難しい。すなわち、「やってもできない」。
だったらどうすればいいのか。
環境に合わせて自分を変えられないのなら、自分に適した環境を探すしかない。これが「伽藍を捨ててバザールに向かえ」の意図です。
この本は面白いので、詳しいことはぜひ読んでいただきたいと思います。
また議論を展開するにあたり、私でも名前を聞いたことがあるような名著を引っ張ってきて実験などを紹介しています。それがいちいち興味深く引き込まれます。以前読んだ「影響力の武器」からも「権威」の説明で電気椅子の実験の話を書いたり、返報性や一貫性など内容をぎゅっとまとめて紹介していました。良さげな書物が紹介されているので、これきっかけに読んでいくのもいいかも。
本書を通して出てくる内容として、我々が生活する環境や人間関係を空間に分け分析しておりイメージしやすいです。
愛情空間:家族、恋人(イメージとしては、2~10人。半径10m)
友情空間:親しい友だち(最大でも30人程度で普通は10人前後。半径100mという感覚)
政治空間:先輩、後輩、上司、部下など友だちでないけど他人でもない。敵と味方の付き合いでもある(100人。年賀状の枚数)
貨幣空間:地球という市場で貨幣を介して繋がっている他人(範囲は無限大)
ネットワーク化された現代社会では、深い友だちが減りゆるい知り合いが増える傾向にあるという部分が面白かったので、参考までに以下に抽出。
政治空間:敵をやっつけて権力を得る冷酷なパワーゲーム。いじめもここ
貨幣空間:競争しつつも契約を尊重し相手を信頼する別のゲーム。市場の論理を遵守していれば外見や出自などは誰も気にしない
我々は生活するために富を獲得しないとならないが、
1.相手から奪う(権力ゲーム)
2.交易する(お金儲けゲーム)
手段としては上の二つがある
政治空間の権力ゲームは複雑、貨幣空間のお金儲けゲームはシンプル
誰でも簡単な方がいいので貨幣空間が政治空間を侵食していく
この傾向は中間共同体で顕著(中間共同体とはPTAや自治会、会社の同期会のような他人以上友だち未満の人間関係)
PTAや自治会は面倒–>お金を払ってサービスを購入–>中間共同体は消滅しつつある–>中間共同体が消えると次は同様に友情空間が貨幣に浸食される
友だちは面倒な関係で維持が難しい–>考えてみれば偶然同じ時代に同地域で生まれただけでは?–>それなら貨幣空間の人間関係(スモールワールド)で十分だという人が増える–>友だちがいなくなり知人が増える (*知り合いの知り合いと辿っていくと世界中の誰もが案外早く繋がってしまうという意味でスモール)
また現代の貧困とは、単に金銭的に貧しいだけではなく、愛情空間も友情空間もなくなり、裸のまま貨幣空間に放り出されることである。(よってすぐホームレスになる)
個人的にもリアルよりネットを介しての繋がりが増えていますが、ただ貨幣空間がバラ色の未来ではないことも確かです。自由と自己責任の原則の下に誰もが孤独に生きていかなければなりません。愛情も友情も喪失し、お金が無くなればホームレス。ですが政治空間が貨幣空間によって浸食される潮流は誰にも止められないという…。
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呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん(失礼)
お久しぶりです。正吉です。
「伽藍を捨ててバザールに向かえ」でググると確かに一番に出てきますね。うれしいです。気づきませんでした。
僕はこの本のおかげでいろいろ悩んでいたことが解決したので、座右の書にしています。なので、たくさん記事にしています。たくさん記事を書くと検索で一番になりやすいのかもしれないな、と気づきました。
いろいろありがとうございました。
>正吉さん
どうも~、呼んじゃいましたね。
こちらも嬉しいですし、正吉さんだけでなく知ってるブログがでると、頑張ってるな~、さすが、やるな~と思います。
一つのテーマ(キーワード)でいくつかちゃんとした記事を書くことは、自分の理解や考えも深まって検索も上位に来やすいといいことずくめですね。何か毎月テーマを決めて他の記事に加えてそれについて書くってのがいいかもしれません。(ってみんなやってるのかな)
そういえばこの本は僕も読んだかな。
橘さんの本は何冊か読んでいて、どれもなかなか面白いです。
組織にしがみつく時代は終わり、個人で勝負する時代になりました。
それはそれで面白いです。
僕らのような人間に生きやすい環境が整ってきたといえるでしょう。
>招き猫の右手さん
私は「貧乏はお金持ち」だけ読んでます。
これ、面白かったので他も読んでみますよ。
数人で協力すると一人以上のことができると思うけど、大きな組織にすると人って何だかダメになっちゃいますね。