暮らしの拠点は1か所でなくてもいい。
都会か田舎か、定住か移住かという二者択一を超えて、「当たり前」を生きられるもう一つの本拠地、“フルサト”をつくろう!
多拠点居住で、「生きる」、「楽しむ」を自給する暮らし方の実践レポート。
都会と地方のように生活の場所は複数あってもいい。
フルサトは生まれた場所でなくてもいい。人との繋がりで場所を決める。
熊野に古民家を買い、シェアハウスを造る。
フルサトには東京などの都市部から一時離れて心身浄化という意味もある。
本書は都市に住む人が田舎にもう一つの安心できる場所「フルサト」をつくることがメインになっています。
ちょうどタイムリーな感じでこの本に出会いました。自分はリタイア中なので”都市で疲弊して田舎で休息”というのとは異なりますが、数ヶ月後には札幌と地元の二重拠点という楽しげな生活に突入予定です。
週末海外という本がありました。週末田舎というだけでなくとも、可能なら夏だけ北海道でも冬だけ沖縄でも、好きに住む所を移せるような柔軟な住み方が安価で可能になれば嬉しいです。(そのために無職にも柔軟な賃貸事情を望みますが、個人的にはドミトリーじゃなくて沖縄のウィークリーマンションが激安になってくれれば冬期の三ヶ月くらい滞在したい。)
骨を埋める覚悟はあるのか
本書に書いてあることですが、田舎に住む場合に「骨を埋める覚悟はあるのか」と問われることがあるようです。
あとがきに
「本書ではそういう二者択一の決断が必要なのか?という疑問の下に、それを軽やかに超えていくための考え方をまとめた次第です。」
とあります。
田舎に住みたいと考える人も、いきなり完全移住しないといけない、そんな風に考えてハードルを上げていては一歩を踏み出せません。もっと気軽に考えてもいいのでは?と背中を押してくれる本です。
大きな覚悟をするのは困難ですし、先ずは年に数回でもふらっと訪れることから試してみて、そこがしばらく滞在できるような場所になればいいです。都市で働いていても、そこに行けば疲弊した自分を休ませることができる場所、それがこの本でいうフルサトということだと思います。
私の場合ですが、札幌移住を考えているものの地元には高齢の親がいます。幸い息子にどうしろと何かを強要することはないのでありがたく他所に住んだりしていますが、その札幌を一つの拠点として当面は実家と多拠点居住を試みるということになりそうです。
田舎と都会ということでもなく、「地元」と「好きな場所」ということになります。日本の北と南でもいいし、国内と国外でも自由に考えていいのです。
ナリワイについて
自分の場合は貧乏セミリタイアをしていますがある程度貯蓄もあり、移住後の仕事については多くの収入を得ることは考えていません。資産が厳しくなったら数年間働けばいいけれど、50歳という年齢になって所謂一般的な就職をして働く事は現在の日本の風潮から考えると難しそうです。
なので何でもする気はありアルバイト等の収入が少々あればいいと考えています。他はブログで小遣い程度の収入でもないよりはマシだし、細かい収入を複数得ることを考えた方がよさそうです。
そういった一般的な就職ではなく、自分のやれることで小さく稼ぐような「ナリワイ」を探したらどうでしょう。都市部では孤立した人を助けるみたいなことがなりわいになるかもしれませんし、この本では地方での「ナリワイ」についてもざくっと道を示しています。
読んではいないのですが、多分筆者の「ナリワイをつくる」という本の一部エッセンス的なものが書かれているのではないでしょうか。
ここでいう「ナリワイ」というのは、都会での会社勤めのような形態ではなく、ある程度の生活費を手に入れることができればいいのではないかと考え行う半仕事、半趣味のようなものだと思います。
実質の収入
本書では収入を増やすだけでなく消費を抑える実質の収入という考え方も教えてくれます。年収400万の人が300万のリフォームを外注すれば、その年に使える収入は100万ですが、年収200万の人が50万の材料費で自身でリフォームできれば、実質150万使えることになります。
自給自足というのは何も家庭菜園や畑を作ることばかりではありません。住居を自給することで技術も手に入るし、技術があれば、たとえ外注に出しても見積もりが適正化の判断がし易くなる。
なので、様々なものを自給すること、またある人には不要でも声をかけると必要な人がいたりすることがあるので、その手のものをやり取りしたり、中間業者を入れずに必要な物を交換することなどで実質の収入は相対的に上がるため、小さなナリワイでもやっていけるのではないかということです。
具体的に楽しそうな「ナリワイ」のアイデアがいくつかありました
地方の田舎では都市部みたいに何でもあるわけではないので、もし本屋がなければ月に一度でも移動書店を呼べないかとかですね。一件しかない中華料理店の主人がリタイアしたら中華料理店がなくなってしまう。その穴を埋めるような形を「ナリワイ」にするといった所です。
単身だけではなく家族で移住することを考慮すると、子供の教育が非常に重要となるポイントとなります。筆者が都市部と地方を行き来する中で、実際に夏だけ中高生のための夏期講習を行ったりもしているとのこと。
他にはパン屋の例を出していますが、店をやっても毎日開ける必要もないし、それほどの需要もなさそうだ。そこで小麦と水、塩が主原料のシンプルなハード系のパン屋を週に二、三日開き、売れ残ったパンは自分で食べる。カレーパンばかり食べていては体に悪いが、ハード系のパンなら毎日食べても大丈夫で、そういう自給につながる商品を選ぶことも重要とのこと。自分が食べるために美味しく作ろうとするのもミソですね。
様々なアイデアが書かれていて、パン屋をやるということではなくとも、実際にナリワイを見つける時の考え方の参考として有用です。
田舎には文化的要素が必要
本書はセミリタイア界隈では皆一度は著作を読んだことがあると思われる「pha」氏と「伊藤洋志」という方が章ごとに担当する形になってます。
実際に両氏が過疎地でシェアハウスを創る過程が紹介されますが、面白い活動があると面白い人達が集まってくるようで、自分たちでゼロから文化を創っていく活動が紹介されていました。
地方には観光客向けのスポットがあってもそこで地元民が楽しめるわけじゃないです。私の場合なら松本城とかですね。そういう場所は観光で一度訪れたら大概は何度も来るものじゃありません。定期的に訪れたい人や移住したい人を増やすなら、日常の暮らしで必要な文化的要素を増やすことが必要になってきます。
過疎地では都会のような文化的なものがない。なら田舎に自力で文化的要素を構築してしまえということです。
取り壊すはずの校舎を再生
「フルサトをつくる」では、浸水して取り壊すはずの校舎を、取り壊す予算があるならそれで再生させようと声を上げた人の話が出てきます。それに賛同した市も柔軟でいいです。
そこにはブックカフェ(書店にカフェが併設)とパン屋が生まれました。
運営しているNPO法人の代表者は「まるで町を一から作っているような感覚」だと言います。
そしてカフェなどが作られると、他にも次々とあったらいいなと思うものが思い浮かびます。いい感じのレストラン、酒が飲めるバー、そうなってくると泊まれる施設も欲しい。
元々校舎だから空き教室があり、そこに色々な種類の店を入れたらショッピングモールみたいで面白そうです。
それだけで田舎が文化的な生活っぽくなる
良い本屋と良いパン屋と良いカフェがあれば、まるっきりの田舎が少し都会的で文化的な生活っぽくなると書かれています。
カフェは飲み物を飲むだけじゃなく、おしゃべりしたり休憩したり、会議もできるしミニライブを開いてもいい。
そのブックカフェを設計する時、まるっきりオープンで交流できる場所にするか、半分プライベートエリアかの二案あったらしいのですが、最終的にある程度区切られているエリアを儲けたそうです。
カフェの持つ機能で、「人と交流する」、「人間関係から少し離れて一息つく」は共に大切だけれど、田舎では後者が必要とされることが多いようで、地元の若者に話を聞いてそう決定したとのこと。
田舎は狭いのですぐ知り合いに出会してしまうからねw 松本くらいでも同年代は行くスポットが決まってくるので昔はけっこう遭遇しましたよ。
ここで取り上げられたNPOの代表者のように、田舎に一からそういう自分たちに居心地がいい拠点を作るってのはものすごくバイタリティーのある人だからやれるのでしょうね。人と交流しながら創り上げていくことは非常に楽しいのだと思います。
私はそこまではバイタリティーもやる気もないし、すっげえ仲の良い人以外は継続的に他人と協力していくような、そういう繋がりがあると徐々に窮屈になってくるかも。なので既に出来上がった自分にちょうど合いそうな場所に、自分自身が動いてしまうのです。
互いが楽しいことをやるだけ
pha氏は活発に活動している人達を見て「すごいなー」と思いながら横で見ているだけだそうです。みな繋がっていて協力し合うけれど、力を合わせ一つの方向に進まないといけないわけではない。そうゆう「ゆるさ」があるのが居心地がいいようです。
一つになって頑張ろう!みたいになると途端に窮屈な感じになると思うけど、ここが各自楽しいと思うことをやりながら自然と地域に貢献するという感じが継続する秘訣なのでしょう。
低コストであまりお金が絡んでいないというのも大きな要素。採算を取らなきゃと思ったり利益を分配とかなったらややこしく、のんびりやれなくなってしまう。大事だけれど、お金に行動を制限されるのはどうでしょうか。
長々となってしまった。ちょうど私の移住熱が本書の多拠点居住という考えとマッチして、色々と詰め込みたくなってしまったようですが、移住について興味がある方には考え方のハードルを下げてくれる本かもしれません。
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