男性学という立場から、男性の生きにくさ、働く事しか選択肢がない問題などについて書かれた本。
男性学とは、男性が男性であるからこそ抱えてしまう悩みや葛藤に着目する学問。
日本の場合は、長時間の労働や自殺の多さ、結婚難などが男性の抱える典型的な問題だと考えられています。女性学の影響を受け議論が始まったとのことですが、まだ歴史としては浅くあまり知られてはいません。
女性学、男性学共に「性別にとらわれない多様な生き方」の実現に着目していますが、特に男性特有の問題についてフォーカスするのが男性学です。
男の生きにくさとは、本の冒頭で例に出されていますが、自動車免許を取得する際に、実際は乗りもしないので「オートマ限定」で十分なのに、男なら「マニュアル免許」を持っていた方が良いだろうと、面子を保つために意地でマニュアル免許を取得するというようなことです。
最近、若者の「オートマ限定」の割合が「マニュアル」を超えたというニュースを見ました。今の若者はそういう無意味な拘りが抜けてきたとも思いますが、これは単に若者が車自体に興味が無い為で、別の部分では見栄を張ることもあるのかもしれません。
基本的に、大人の男性には、正社員にせよ非正規にせよ、フルタイムで定年まで働き続けるというたった一つの生き方しか許されていません。これは男にとって非常に息苦しい。
それに男が仕事で苦しく辛くなってくる。このしわ寄せは家庭の女性や子供に向かうことも多く、男性の息苦しさは皆の為にならないだろう。仕事も家庭も完璧にこなせるヒーローのような男性ばかりではないのだから、現在のような働き方を見直すべきであろうというのが大筋です。
もちろん一生懸命に働くことは悪いことではありませんが、それによって「立派な社会人」だと思っているなら視野狭窄に陥っている。仕事の評価だけが、その人に対する評価ではありません。
社会には子供も学生もお年寄りもいる。社会は会社員だけで成り立つものではないし、仕事だけをしていれば他は疎かでも免除されるという考えはもう成り立たない。
このように序盤では、現在の働くことをめぐる「普通」や「当たり前」に疑問を投げかけています。そして、うつ、パワハラ、女性との関係など多彩な項目を考える内容へと続きます。
老害についても言及されていますが、若い人はこの本に書かれたような感覚は既にある程度あると思うので、自分と同世代か、少し上の世代に読んでもらいたい本です。そしてもう少し時代に沿った考え方をして欲しい。
なにも仕事をさぼったり、会社を辞めることを勧めているわけではありません。社員がやりがいを持って働き続けられるかどうかは、仕事の内容もありますが職場環境の影響が大きいです。朝から晩まで働く、学校を出て就職したら40年(以上)もずっと働く、そういうここ何十年かの「常識」を見直す必要があるということ。
最後に、「男が働かなくてもいいですか」という問には、以下のように書かれています。
もちろん、働かなくても大丈夫です。日本では、男性は学校を卒業後、すぐに就職して、定年退職までは働き続けるのが「常識」になっています。会社員として働いている間は、週5日40時間が「最低限」で、それ以上の労働が「普通」に求められます。本来は、週5日40時間が「基本」で、これを超えた分は、「時間外労働」です。しかし、長時間労働が「当たり前」なので、まるで「甘え」や「綺麗事」を言っているように聞こえてしまいます。これだけこじれてしまうと、一度、男性の働き方についての「常識」をリセットするしかありません。
そのために、ここで高らかに宣言します。
働く、働かないは自分が決める。
もちろん「働かない」だけでは食べ物を買うお金を得られません。雇われて働きたくないが、ではどうやって生きていくのだという解決策はなかなか見出せないです。
自分で堅実な事業を始めることも答えかもしれませんし、こうやってブログを書くことを続けたら答えになるのか、セミリタイア者がブログを書く理由の一つは、それを知りたいからでもあると思ってます。
セミリタイアでブログを始め、これからもアルバイトなどして働かなければならない以上、労働環境が少しでも健全になればいいと願っていますし、そのために発信するには、この手の本を繰り返ししつこく読むことも大事ですね。
似たようなことでも繰り返し読んでいるうちに、自分の中にある考え方が整理され、徐々に自分の言葉で発信出来るようになっていくのでしょう。今回は図書館の本ですが、またこういうのを集めたくなってきてしまった(笑) まだまだインプットせねば。
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