『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイヤモンド著を読みました


人類史の本であり、なぜ地域により発展の速度に違いがあったかを歴史科学的?に検証するもの。

「歴史は、異なる人々によって異なる経路をたどったが、それは、人々のおかれた環境の差異によるものであって、人々の生物学的な差異によるものではない」

というのがこの本の要旨。

 

最終氷河期が終わった一万三千年前、人類は南北アメリカ大陸まで拡散し地球上に広く分布した。

その時点では似たり寄ったりの狩猟採集生活をしていたと考えられる。

しかし地理的偶然、生態的偶然により、たまたま近くにあるものを利用しやすい、しにくいがあった。

また、それぞれの大陸の地形や気候などの特徴から、ある場所での発見や発明が伝搬しやすい、しにくいという差があった。

 

特にユーラシア大陸では、

食料に適切な、品種改良しやすい野生祖先種が存在した。
大型で家畜にできる哺乳類がいた。
大陸が東西に長く、同緯度の生育環境で効率よく収穫できる農作物が伝搬しやすかった。

これにより、他の大陸の人類より少し早く農耕が発展(家畜は動力としても)

→食料生産による余剰の蓄積が可能。非生産階級の専門職をもつゆとりを生み出し、人口の稠密な大規模集団の形成を可能にした。

 

もちろんユーラシアには古くから人がいた。アメリカ大陸に渡った人々は新しい生態系や土地に適した技術を作り出す必要があった。などもある。

そして15、6世紀あたり、ヨーロッパ人がアメリカ大陸に向かった時、家畜動物由来の病原菌に対する免疫がない先住民は病原菌に勝てなかった。(アステカ、インカ帝国など、おそらく天然痘で人口の半分以上が)

 

人間社会の展開に影響を与えうる重要な環境の違いまとめ

・栽培化、家畜化の候補となり得る動植物の分布が大陸によって異なっていた。

・大陸により気候、地形的な条件で、栽培種や家畜の伝搬や拡散の速度に違いがあった。伝染病による伝搬不可もあった。

・他の大陸との地理的な孤立。

・大陸の大きさや総人口。単純に多ければ発明する人が相対的に多い。

もちろん検証すべき今後の課題はある。文化的特性や個人の影響がワイルドカードとして、どのくらい予測不能に影響するかなど。

 

動力や戦力として有用だった家畜については、アメリカやオーストラリア大陸の大型動物は途絶えてしまった。アフリカにも大型動物はいるが家畜化可能なほど従順ではない。

(アフリカやユーラシアの生物は人類と共に長い間生活してきたが、アメリカ大陸では後から渡って来た人類の怖さを知らず恐れなかったため滅ぼされたかもしれない)

 

上下巻に分かれ結構長いですが、実は下巻の方がおもしろかった。

「文字」についての考察や、中国や東南アジアからポリネシア、アフリカなどについて、上巻での知識をふまえた個々の具体的な解説だったため興味が湧いたのかもしれない。

なぜ始めに最も発展していた肥沃三日月地帯と中国ではなくヨーロッパがという考察も最後にしている。

 

また保守的な社会より、新しいものを受け入れる社会の方が生き残ってきた。社会は自分達より優れたものを持つ社会からはそれを獲得する。もし獲得できなければ、他の社会にとって代わられてしまう。

-<「本の感想など」カテゴリーの他の記事もみてね >-

広告とか


-- 記事一覧ページへ --



Pocket

同じカテゴリーの記事

SNSでもご購読できます。